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琥珀色に染まるとき
第20章 ラスティネイルの夜

 穏やかに微笑んだ榊が、少々強引と思われるかもしれませんが、と前置きしたうえで続ける。

「涼子さんに必要なものは、心の余裕よりも、前を見る勇気なのではないでしょうか」
「ですが……心に余裕がなければ、前に進むことだって難しいと思います」

 力なく反論すれば、彼は目尻のしわをさらに深めた。

「大丈夫ですよ。今のあなたにはご自身を客観視できるだけの余裕がある。あとは自分の心がなにを求めているか、誰のためになにがしたいのか、それに素直に従うのみです。幸せは自分次第。ほかの誰でもなく、涼子さん自身の心が決めることです」
「で、でも……私が自分の幸せを求めれば、求めるほど……」
「周りの人間が不幸になると?」
「…………」
「そう感じてしまうのも無理はない。しかし、これだけは言わせてください。少なくともあの男の幸せは、あなたとともに生きることです。景仁にはあなたが必要なのですよ、涼子さん」

 西嶋に関わる人たちは、なぜこうも親切な人間ばかりなのだろう。彼の人柄がそうさせるのか、それとも、彼のような人柄の人間が自然と集まってきたのか。その縁に一瞬でも触れた自分には、これから先、どんな出会いが待っているのだろう。

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