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琥珀色に染まるとき
第20章 ラスティネイルの夜

 黒く哀しい影を秘めて、ひっそりと生きてきた。短いようで長かった、十一年。
 そんな日々と決別し、思うがままに自らの幸せを選べば当然、風当たりは強くなる。どんなに醜かろうが、苦しかろうが、その激しい嵐に必死に立ち向かうことができたら、その先には未来さえ見渡せるほどの明るい青空が広がっているのだろうか。

 涼子は涙を拭ったその手でグラスを取り、ロブ・ロイを飲み干した。それを見た榊が、二杯目のカクテルを作ってくれた。
 そうして差し出されたのは、綺麗な丸氷に明るいマホガニー色が輝く一杯。

「ラスティネイルでございます」

 優しい笑顔に見守られながら、ゆっくりとそれを口に含む。とろりとした甘い酔いが、喉を潤していく。その余韻を噛みしめながら、心の中で語りかけた。

――真耶さん。美味しいですね。

 震える心のせいで、声を発したら感情が決壊してしまいそうだ。言葉が出ないまま榊に視線を送ると、彼はすべてを悟っているかのように微笑んだ。そこでようやく榊に笑みを返すことができると、彼は最後にこう言った。

「錆びた釘は、なかなか抜けません。過去の記憶は、錆のように心にこびりついて、なかなか剥がれてはくれないかもしれません。ですが私は、いつかそれがあなたたち二人を固く繋ぐ絆になると、信じています」

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