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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

「明美さん、大丈夫?」
「涼子さん……ごめんね。私のせいで、こんな……」
涙ぐむ彼女を安心させるため、自らの胸中を悟られぬよう必死に笑顔を作ってみせる。十一年前のあのとき、真耶も今の自分と同じように恐怖と奮起の狭間で揺れ動いていたのだろうかと、涼子は震える息を呑みこんだ。
「お前も小夜子にはめられたんだよ、俺と同じように。ボディーガードなんて狂言さ。事をおおげさにして、誰かにかまってほしかっただけだ!」
突然、小林が上擦った声をあげた。
「……どういうこと」
「そいつは俺の女だった。それなのに、俺を裏切ったんだ」
「それは、あなたの妄想でしょ」
「違う! 俺はずっと尽くしてきた。生活費も、プレゼントも、整形手術の費用だって、全部俺が……」
「もうやめてっ!」
明美が小さく叫んだ。不自然なまでに美しいその顔は、悔しげに歪められている。
「黙れブス! 俺がいなきゃ生きていけないくせに」
その言葉は、女としてのプライドをえぐり取るには十分だった。腹の底でふつふつと怒りがこみ上げてくるのを、涼子は自覚した。
「……それは、お金で明美さんを支配していただけよ。自尊心が低い彼女に、一人では生きていけないんだと思いこませて、依存させていただけ」
「そうさ。こいつは自分に自信がなくて、男と金に依存する女だ。依存して、寂しさを紛らわすために利用するんだよ。俺の心も、金も、全部持っていかれた」
「彼女はそんな自分が嫌で、その悪循環を断ち切ろうとしたんじゃないかしら」
「はっ! そんなわけねぇだろ」
吐き捨て、小林は続ける。
「わざわざ警察沙汰にしたのは、俺から示談金をふんだくるためさ。俺が手を出せないのをわかってて、わざとストーカー被害者になりすました」
「でも、警察だってちゃんと捜査したはずよ。そのうえで、あなたはストーカー規制法違反で捕まったの」

