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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

「お前ら、好きにしていいぞ。そいつは男の店でセックスするような淫乱だからな」
信じがたい言葉に思わず視線を戻すと、恐怖で声が出せなくなった明美の上で、小林はこちらを眺めながらククッと不気味な笑い声をこぼした。
「せっかく小夜子を連れていったのに閉まってたから、盗聴マイクで聞かせてもらったよ」
「盗聴っ……?」
「クリスマスイブの夜だよ。一人で勝手にあの店に行ってた小夜子をとっつかまえて、一緒に戻ったらもう閉店してた。まさか中でヤッてるなんて思わなかったぜ」
明美は恐怖におののきながら、小さく何度も首を左右に振っている。
「小夜子はそれまでお前とあいつの関係を知らなかったから、そうとうショック受けてたぜ。憧れの女が、あんなに淫乱だったなんてな」
西嶋の店での情事の途中、人の大声を聞いたことを涼子は思い出した。まさか、この男に聞かれていたとは……。
「あのエロい声、こいつらにも聞かせてやってくれ」
「……あんた、狂ってるわ」
「ははは! お前に言われたくねーよ! あんあん喘ぎやがって」
「……っ」
「小夜子にも聞かせてやったら、顔真っ赤にしてたよ。そのあとホテル行ったら、こいつびっしょびしょでさあ。あの男と自分を想像して興奮したんじゃね?」
全身の血が一瞬にして頭に集まっていくのがわかる。わなわなと震える唇を、怒りに任せて開いた、そのときだった。
「この……っ、くそ野郎!」
それは、今まで恐怖に凍りついていた明美の甲高い叫び声だった。驚きなのか憤りなのか、小林の目が大きく開かれる。
「ああ? 殺すぞてめぇ!」
「やれるもんならやってみな! そんな勇気もないくせに、自分より弱い人間にしか威張れないくせに! 結局自分が一番大切なあんたなんかに、私を護ろうとしてくれた涼子さんの気持ちがわかるか!」

