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琥珀色に染まるとき
第1章 雨に濡れたボディーガード

ボディーガード――すなわち、身辺警護。いまだ一般市民には馴染みの薄い職業だが、近年その必要性は高まりつつある。
それを証明しているのが、増加傾向にあるストーカー被害の数だ。ここ三年間、相談件数は年間二万件を超えており、十年前と比べても約二倍に増えている。
特定の人物に対する、恋愛感情や好意が満たされなかったことに対する怨恨の感情。それを満たすためにおこなわれる迷惑行為――つきまとい、待ち伏せ、監視、無言電話、電子メールの連続送信など――を繰り返すこと。それが、ストーカー行為だ。
エスカレートしたストーカー行為が、暴行事件や殺人事件に発展することもある。世にストーカー犯罪の恐ろしさを知らしめたのは、十七年前に起きたO川ストーカー殺人事件だろう。当時女子大生だった被害者が、元交際相手の男をはじめとする犯人グループに執拗な嫌がらせを受け続けた末、殺害された事件だ。
これは、当時の警察の捜査怠慢が浮き彫りになった事件としても有名である。被害者とその両親がストーカー行為を何度も相談していたにもかかわらず、“民事不介入”を理由にろくに取り合おうとしなかった。事件発生後には、捜査怠慢に注目が向かないよう、意図的に被害者に不利になるような情報を公開し、被害者にも責任があると世間に思わせるよう悪印象を与えた。
この事件を契機として、翌年、『ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称ストーカー規制法)』が施行された。これまでに一度、規制対象を拡大するなどの改正がおこなわれている。
しかし、凶悪なストーカー事件は依然として起こり続けており、最悪の事態を未然に防ぐことがなかなかできていないのが現状だ。ストーカー犯罪の抑制にはまだ多くの課題が残されている。

