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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

「……はあ?」

 馬乗りになったまま手を止めた男が、怪訝な表情を見せる。

「聞こえなかったの? もう助けが来るのよ」
「なんだと? 嘘をつくな!」

 わめく大男に、涼子は薄く笑んでみせた。

「嘘じゃないわ。私のバッグを調べてみなさい。GPS機能付きの携帯が入っている」
「バッグの中身はもう確認済みだ」
「そうかしら。もう一度調べたほうがいいわよ」
「なにぃ?」

 半信半疑という様子の男は、後ろで動画を撮っている狐面に見てくるよう指示した。ひょろりとした後ろ姿が遠ざかっていく。

「ご丁寧にバッグを回収してくれたおかげで、きっと仲間の誰かが異変に気づいてくれているはず。そんなこともわからずに私を拉致しようなんて、間抜けね」
「くそ、デカい口叩きやがって!」

 男は乱れたシャツを力任せに開くと、身をかがめる。その一瞬の隙をついて、前のめりになる男の鼻に思いきり頭突きをした。

「ふがっ!」

 男は情けなく呻きながら、その浅黒い顔を両手で覆った。
 この見た目の迫力だけが売りの大男が、こいつらの頼みの綱なのだろう。それが弱々しい声をあげているのを目の当たりにした小男は、完全にうろたえて及び腰になっている。脚を押さえる手の力が弱まった瞬間を狙って、大男の股間に蹴りをいれた。

「ぐっ……」

 ゆるくなったロープからすばやく手を抜き、男の顔を二度殴り、頭を掴んで地面に打ちつけた。

「うあ……っ!」

 でかいだけの図体を押し転がして立ち上がり、顔面蒼白の男を睨みつける。背の高さはさほど変わらない。いける、と涼子は思った。
 男が走り出だそうとしたので、背中に蹴りを食らわせて倒し、腕を掴んで肩の関節を外した。

「う、ああぁっ! 腕が、腕が!」

 完全に戦意喪失している男のズボンのポケットから、車の鍵を奪い取った。

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