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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

「もう少しよ。頑張って」
「う、ん……」

 足を引きずり、転びそうになりながらも、なんとか支え合って光のもとへ急ぐ。

「……待てこらあっ!」

 出口まであと一歩のところで、何者かの怒声とともに頭を硬いもので殴られた。

「うっ!」

 視界がぐらりと揺れ、ゆっくりと崩れ落ちていく。

「涼子さん……っ」

 明美の声が、遠くで聞こえた――。

 仰向けにされて目に入ってきたのは、倒れていた小林と、姿が見えなくなっていたはずの狐面だった。それぞれがナイフと鉄パイプを握りしめ、荒い息でこちらを見下ろしている。腕を掴んで引きずられ、薄闇の中に連れ戻された。
 頭を殴られた衝撃で、意識が遠のいていく。

「携帯なんてなかったぞ! 嘘ついたな、お前」

 叫ぶ狐面の隣で、小林が残忍な笑みを浮かべている。

「そんな姑息な手で逃げられると思うなよ」

 鉄パイプを投げ捨てた狐面が、再びカメラを向ける。小林が叫び声をあげながら襲いかかってきた。直後、首元にひやりと冷たい感触が走った。ナイフを突きつけられたのだ。

「動いたら殺すぞ!」

 小林は、涼子のシャツを開き、インナーと下着を力任せにずり上げる。ホックとファスナーを壊れるほど強引に外してズボンをずり下げ、パンティーストッキングを力づくで破る。
 ぼやける視界の中で、男はがちゃがちゃと音を立ててベルトを外している。下半身を露出させると性急に覆いかぶさってきた。馬乗りになり息を荒げる小林に、あの男の顔が重なった。


――お前のせいだからな。


 少しでも抵抗すれば頬を打たれ、首を絞められる。


――僕の涼子。


 夢か現実か、脳裏にはあの日と同じ映像が流れている。

「涼子さん、涼子さぁん……」


――涼子ちゃん……。


 もう誰のものかわからない、いくつもの声が頭の中をバラバラに飛び交った。

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