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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

 突然、藤堂が口を開いた。

「俺はそろそろ帰るよ」
「あっ、あの……ご迷惑おかけして、すみませんでした」

 返答に困ったのか、藤堂は一瞬黙る。だが、身をかがめてこちらを見据えると、静かに笑った。

「俺の意志でやったことだ。君を救いたくてね」

 初めて見るその柔らかな笑みに言葉を失っているうちに、彼は背を向けた。去っていくその後ろ姿を呆然と見送る。扉が閉まった瞬間、城戸が、あっ、と頓狂な声をあげて椅子から立ち上がった。

「俺、先生呼んでくる」

 そう言い残し、去ろうとする。気を利かせているつもりなのだろうかと思った直後、彼は振り返った。

「東雲」
「……なに」
「俺、敵わねーよ」
「え?」
「お前を一番早く見つけるのは俺だと思ってた。でも、俺じゃなかった。どうやっても敵わねぇんだよ、俺は」

 自嘲の笑みを浮かべたあと、城戸は語り出した。

「お前さ……不特定多数の人を護りたいなら、まずお前が一番護りたいと思う人のそばにいろよ。誰かを護るって、根底はそういうことだろ? 俺はそうしてきたよ。一番近くで見守ってきたつもり。そいつが幸せになることが、俺の幸せだから」

 そして、一瞬の間をおいてから、こう続けた。

「一個覚えとけよ。いろんな種類の愛情で、人間関係が成り立ってるってこと」

 その言葉の意味を考えているうちに、城戸は無邪気な笑みを残して病室を出ていってしまった。重要な任務を終えたかのようなその大きな背中を見ていると、なぜだか一抹の寂しさを覚えた。

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