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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

 静かな個室に西嶋と二人だけになった。急な静寂に安堵したようでもあり、落ち着かないようでもある妙な気分を持てあます。彼も同じ気持ちなのだろうか。

「……ねえ」
「ん?」

 互いの声がやけに響く。

「景仁さんは、どうやってあの場所がわかったの」
「城戸くんが藤堂に連絡をくれたんだ。明美さんの一件があった夜、連絡先を交換していたらしい。藤堂は用心深いから、必要だと感じたらどんな些細な情報でも仕入れておくんだ」
「そう……」
「お前が自宅に着いたのに、またどこかに向かって移動し始めたと連絡が入って、直前までお前と一緒にいた藤堂はおかしいと思ったそうだ。明美さんともまったく連絡がつかなかったらしい。それで俺に連絡をよこした。だがその時点では、まだ小林の車は移動中で場所が特定できていなかった」
「でも、あなたには予想がついたのね」
「……店に駆けこんできた藤堂を車に乗せて、あの場所に向かった」
「あなたこそ無茶してたんじゃない」
「無我夢中だったんだ」
「怪我はないの?」
「ああ、大丈夫だよ」

 優しい微笑みに緊張がゆるみ、ため息が漏れる。

「もう……無事で本当によかったわ」

 ふと、彼が目を伏せた。

「それはこっちの台詞だ。俺は、なにも知らないまま終わるのが許せなかったんだ」

 固くなったその低い声が、彼の心の痛みを物語る。そうだ、この男は、自分の知らぬ間に恋人を失ったのだ。涼子はあらためてそう感じ取った。
 彼は同じ苦しみを繰り返すまいと心に誓ったのだ。足元を見つめるその瞳の中には、なにが映っているのだろう。

「ごめんな。俺がもっと早く……」
「ううん。あなたが来てくれて、私は心の底から安心した。悪いのは私なのよ。ああなったのは私のせい。だから……」

――お父さんもあのとき、一瞬でもそう思ったはずだから。

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