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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

 混乱する頭の中に明美の笑顔が浮かび、直後、目の前が真っ暗になるような感覚に襲われた。

「私、明美さんのこと、全然見えてなかった。あんなに慕っていてくれたのに」

 涼子は独り言を呟いた。そして、心の中で思った。これまで自分は、護り方を間違っていたのだろうか、と。

「……涼子」

 西嶋が、静かに首を横に振った。

「彼女は、たしかにお前を慕っていたが……」

 俯く西嶋の、長いまつげに縁取られたヘーゼルの瞳に哀しみの色が差す。

「それと同じくらい、お前に嫉妬していたんだ」
「……嫉妬?」

 ひっそりと、嘲笑が漏れた。

――どうして、こんな人間に嫉妬なんか。

 どれほど自分の存在を呪って生きてきたか。底知れぬ劣等感と自虐心を抱えてきたか。こんな自分、人に嫉妬されるような人間ではないのに……。

「景仁さん。……あのね」
「ん?」

 想いをうまく声に乗せられず、涼子は黙ってその瞳を見つめる。その視線を受けた彼はわずかに口角を上げ、囁く。

「どうした」

 どこまでも優しい人、なによりも愛おしい男。

 いまだに自分を愛せない人間が、誰かの愛を一身に受けることがはたして許されるだろうか。心の中でくすぶる不安をそのままに、涼子は唇を開いた。

「私ね……」

 潤んだ視界の中にある、硝子細工のようなその瞳に映る自分がどんな顔をしているのか、涼子にはわからなかった。


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