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琥珀色に染まるとき
第22章 涙は朝雨のように


第二十二章 涙は朝雨のように




「……私のせいなの」

 静かな個室には、ベッドに横になったままの涼子のか細い声が落ちる。
 男に殴られたその顔は、痛々しく腫れあがっている。医者によると、全身打撲で骨折はなく、全治二週間程度ということだったが、それは彼女がふだんから身体を鍛えていたおかげだろう。

 涼子は、父親との確執と、その裏にある壮絶な一年を淡々と語り始めた。加害者に対する恐怖と心的外傷後ストレス障害、不眠や抑うつ症状に悩まされたこと、そうして日常生活さえままならなくなり、ついに最悪の事態に自らを追いやろうとしたこと。
 無理して話さなくていいと景仁が制止しても、彼女は静かに語り続けた。だが次第に呼吸が荒くなり、ある瞬間に突然パニック状態に陥ったように取り乱し始めた。

「私も、母と同じなの……っ」
「え?」
「男を誘って……私が、私が!」
「涼子、落ち着け。涼子」
「ごめ、なさ……お父さっ……」

 無理やり抑圧されてきた感情が一気に噴き出すような激しさで、彼女は泣き叫ぶ。

「汚くて……ごめんなさい……」

 それは、これまでも彼女が景仁にときおり見せてきた危うさだった。だが記憶を言葉にしたことで、それは彼女の脳内でより鮮明によみがえり、その不安定な精神は息を吹きかけられるだけで崩れ落ちてしまうだろう。

「いやっ、触らないで!」
「涼子。大丈夫だ、落ち着け。俺を見ろ」

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