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琥珀色に染まるとき
第22章 涙は朝雨のように

 景仁は椅子から腰を浮かせ、まるで少女のように泣きじゃくる彼女の小さな顔をそっと両手で包んだ。怯えるその瞳をなだめるように見つめながら、囁く。

「俺はお前を汚いと思ったことはないし、これからもない。初めてお前を抱いた日に言っただろ、綺麗だって。覚えてるか」

 そう、あれは、互いを縛りつけてきた雨の季節。なにも知らないまま求め合った雨の夜……。初恋の気持ちを思い出したような、せわしい気分に支配されたあの日から。
 いや、違う。十一年前に後ろ姿を見かけた、あの瞬間から。

「お前は綺麗だ。涼子は俺の知るずっと前から、ずっと変わらず綺麗だよ」

 揺れていた深い瞳が、不意に動きを止めた。

「俺はお前に夢中で、この先もお前の虜だよ。お前は、俺の人生の希望なんだ」

 そう口にしたとき、それまで呆然としていた彼女の表情が、たちまちくしゃりと歪んだ。いつもは感情を抑えるようにして静かに涙する彼女は、これまで我慢してきたものをすべて吐き出すように、声をあげて泣く。
 気づけば自分の目からも温かいものが溢れていて、彼女の頬にしずくを落とした。これだけ情けない姿を晒せるのはやはりこの女しかいない――涙を拭うことも忘れ、景仁は思った。

「お、おげさ、よ……」

 苦しそうにしゃくりあげながら、彼女は戸惑いと疑念の視線をよこす。その不安を少しでも払拭できるよう、彼女が素直に受け入れてくれるよう、いつものように口角を上げる。

「おおげさじゃないさ。本当のことだ」
「……っ、ふ、う……」
「今までよく頑張ったな。もう独りで頑張らなくていいよ」
「うぅ……っ」

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