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琥珀色に染まるとき
第22章 涙は朝雨のように

「将来を語り合える相手がいる幸せを、彼女に感じさせてやれよ。今までのように物陰に隠れて噛みしめるようなものじゃなく、堂々と、ただ幸せだと声に出せるような、そういう幸せを与えてやれ。お前にしかできないことだ」
「言われなくてもそのつもりだよ。俺はな」

 からのグラスを下げながら固く返事をする景仁に対し、藤堂は口の端を上げた。

「彼女だって同じ気持ちだろう」
「だといいがね」
「なんだ、自信がないのか。お前らしくない」

 藤堂はスーツの内ポケットから長財布を取り出すと、札を抜き取り、カウンターの上に置いて立ち上がった。

「おい。理香さんが置いていった分で足りてる」

 支払いを断り差額を渡そうとしたが、片手をひらりと上げて拒否される。

「その分は次に社長が来たときにでもあててやってくれ。そんなことより、東雲さんをそろそろ両親に紹介したらどうだ。なにを勿体ぶってる」
「別に勿体ぶっているわけじゃない。簡単に行って帰ってこられるならとっくに連れていってるよ」
「たしかに時間はかかるな」
「それだけじゃない。一度行ったらなかなか帰らせてもらえないぞ。長期休暇必至だ」
「ははっ、あの人ならあり得るな」

 自身の分の釣りも拒んだ藤堂は、コートを手に扉を開け――ふと振り返った。

「新規のお客さんだぞ」

 そう言うと、含み笑いを浮かべ去っていった。

 直後に入ってきた背の低い女が、ぎこちない笑みを浮かべる。

「こんばんは、お兄さん」
「実耶……いらっしゃい」

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