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琥珀色に染まるとき
第22章 涙は朝雨のように

***

 午前六時半――。
 店を閉めてビルの外に出ると、にわか雨が降っていた。しかし、東の空に昇り始めた朝日がビルの隙間を橙色に染めると、それを待っていたかのように降りやんだ。

 帰宅してシャワーを浴び、ベッドに潜りこむも、かすかに漂う涼子の残り香を感じて浅い眠りから覚める。結局、熟睡することなく寝室を出た景仁は、キッチンでコーヒーを淹れた。
 湯気を立てるカップ片手に、暖房の効いたリビングのカーテンを開ける。結露する窓を指で拭うと、雨上がりのよどんだ景色が目に入り、なぜだか幼い頃に見た故郷の風景を思い出した。少しばかり感傷的になっているせいだろうか。


――Hey, Clay! Stop that!


 遠い昔の懐かしい情景がふとよみがえり、景仁は薄い笑みを浮かべた。


 正午過ぎ――。
 見舞いにいく前に愛車を走らせて訪れたのは、涼子のブレスレットを買ったジュエリーショップ。そこである商品を予約してから、病院に向かった。

 一階面会受付にて手続きを済ませ、エレベーターで八階に向かう。面会の旨を伝えようとナースステーションに近寄ると、そこには一人の男の後ろ姿があった。

「東雲涼子の……」

 そう告げ、スタッフから案内を受けた長身の男が、目の前を通り過ぎていく。その横顔に、景仁はあることを直感した。すみません、と声をかけてみると、男はゆっくりと振り返った。
 年の頃は五十代半ばほどか。目線の位置は景仁より少し低いが180近くありそうで、きちんとした装いには威厳さえ感じられる。上品に整った顔立ちが、彼女によく似ている。

「失礼ですが、涼子さんのお父様ですか」
「……ええ、そうですが。君は」
「西嶋景仁と申します」
「娘とは、どういう……」

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