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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

「もう今日は大変だったわ。藤堂が新人秘書を泣かせちゃってね。若くて可愛い女の子なんだし、もう少し優しくしなさいっての」
「引き継ぎも容赦しなさそうですね」
「古臭いのよ、まだ三十八のくせに」
「ふふ。きっと見込みのある新人さんなんですね」
「そうね。でも涼子ちゃんが秘書を引き受けてくれたら、もう少しスムーズにいくと思うけど」

 そう言って、女社長は意味深な笑みをよこす。

「その節は申し訳ありませんでした。お断りしてしまって」

 あらたまって返せば、彼女はおどけたように肩をすくめてみせ、いいのよ、と笑う。話題を変える前ぶりなのか、佐伯はマンハッタンをまた一口飲むとグラスを置いた。

「さて、私の愚痴はまた別の機会にゆっくり聞いてもらうとして……さっきの話を詳しく聞かせてもらおうかしら。夜は長いし、ここには知り合いもいないから」

 覗きこんでくるその表情は妙に意味ありげで、彼女には打ち明けていない過去の一連の出来事まで把握されているようにも見えるが、実際のところはわからない。

「好きでいるだけではどうしようもない事実があって、それでも彼と一緒にいようと決めて、葛藤しながらやってきました。でも、自分が思っているよりずっと、周りが見えていなかったんだと思い知らされる出来事があって、ちゃんと向き合って考えなきゃと思ったんです」

 手中のグラスをかすかに揺らしながら、慎重に言葉を選んだ。

「それで、答えは出たの?」
「答えを出す前に今回のことが起きたので、そのまま……。入院中も彼はずっと支えてくれましたし、退院してからもできる限り一緒にいようとしてくれています。でも……」
「肝心なことを話し合えないまま、消化不良でやきもきしてるのね」
「……はい」

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