この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

 ふと視線を感じて隣を向くと、鋭さをまとった知的な笑みに捕まった。

「このまま幸せになるのが怖いの?」

 答えずにいると、佐伯はくすりと笑う。

「涼子ちゃんが恐れているのは、自分ね。幸せに貪欲な自分。私なんかが幸せになっていいの? って言いたそうな顔してる」
「…………」
「いいじゃないの、貪欲で。人生は一度しかないんだから。タイミングを逃すと、なかなか次の波は来ないわよ」
「たとえ、そんなふうに感じてはいけない立場にあってもですか?」

 思わず口にして、佐伯の濃茶色の目を見つめる。動きを止めた彼女は何度かまばたきを繰り返したあと、視線をグラスに落とした。

「立場か……」

 しばらく思案してから、彼女は続けた。

「立場が幸せの障害になるのなら、それは私も同じかもしれないわね」
「それって……」

 その横顔には、憂いを帯びた微笑が浮かぶ。涼子はその先を口にすることを諦め、自身の手元に視線を戻すと、グラスの中で揺れる淡い黄金色を見つめた。

「涼子ちゃんは、西嶋くんのことなんて呼んでる?」
「え」
「名前?」
「はい」
「そっか」

 佐伯は薄い笑みを浮かべる。

「私の好きな男は、私のことを名前で呼んでくれないのよ。ただの一度も」
「……どうして?」
「真面目で、堅物だから」

 黒髪短髪の威厳ある横顔が、脳裏によぎった。

「私ね、ちょっとした賭けをしているの」
「賭け?」
「その人が私のことを自由に呼べる立場になったら、ちゃんと名前で呼んでくれるかどうか」
「賭けに勝ったら、どうするんですか」

 満足げにグラスを傾ける佐伯に問うと、彼女はバックバーに並ぶボトルを見つめた。

「彼を愛すわ。堂々と」

 その横顔は言葉どおりの強さを持ち、その笑顔には少しだけ恋の色がにじむ。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ