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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

これまで数えきれないほど、頭をよぎっては否定を繰り返してきた。このまま母のようにどこかへ消えてしまおうか――そんな愚かな考えに、ついに弱い心を侵されてしまった。
これまで関わった人たちが与えてくれた好意と励ましは、ときに冷えきった心を熱くし、ときにのぼせ上がった心を静め、軌道を外れそうになる気持ちをもとの場所に戻してくれた。
その優しさを、親切を、たしかにこの胸に受け入れたはずだったのに、一度に幾人もの人格者と出会った反動なのか、まるで大罪でも犯したような言い知れぬ後ろめたさが、そのすべてから自分を逃れさせようとする。
一人になりたい――そのような感情を、涼子はこれまで持ち合わせていなかった。なぜなら、ずっと一人だったから。独りきりではないと自覚できる今だからこそ、一人になれる居場所を欲するのかもしれない。
人間とは、なんて身勝手で、ないものねだりな生き物なのだろう。しかし、それが今の自分自身なのだ。
こんなざまを見たら彼らはどう思うだろうかと、いくつもの顔を思い浮かべながら考える。
温かく励ましてくれた藤堂や榊は失望するだろうか。慕ってくれた明美は傷つくだろうか。想いを寄せてくれた城戸は怒るだろうか。
愛してくれた西嶋は――。彼の困ったような笑みを思い出しながら、涼子は目を閉じた。

