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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

 ドバイでの乗り継ぎを経て、グラスゴー国際空港に到着したのは定刻の午前十一時半だった。
 空港からは、事前に予約しておいたレンタカーで郊外西から中心部に向かって十五分ほど走り、ウエストエンドにあるB&Bに到着した。

 白雲に覆われた曇り空の下、趣のある白い外観の建物が待ち構えている。黒く塗られた鉄製の手すりには装飾がほどこされており、規則正しく並ぶその模様がヨーロッパらしさを感じさせる。
 大きなスーツケースを持ちながら数段の階段をのぼり、黒い扉を開けて中に入ると、外観同様、白塗りの壁に黒を基調としたモノトーンのインテリアが目に入った。
 受付に向かうと、親しみのある笑顔の男性に迎えられる。スコットランドの中でも特に訛りが強いのがグラスゴーと云われるが、彼は比較的わかりやすい英語で対応してくれた。

 午後一時のチェックインにはまだ早いので、フロントに荷物を預け、徒歩十分ほどのところにある美術館に行くことにした。
 通りに出て西へ、林立する建物や道路を行き交う車の流れを眺めながら、ブーツの底を鳴らし歩みを進める。見上げれば、物哀しい空模様。気温は一桁。分厚いマフラーに顔をうずめ、手袋をしている手をダウンジャケットのポケットに突っこんだ。

 やがて、赤色砂岩の立派な建物の前にたどりついた。独特なスペインバロック様式で、今から百十年以上前に建設された実に美しい建築物だ。
 圧倒されつつ入り口に足を運び、重厚な回転扉から中に入った。
 中央ホールで初めに目に入ったのは、高く迫力のある吹き抜け天井と、教会のように豪華な装飾、そして奥の壁に構える巨大なパイプオルガン。その荘厳さに、涼子は思わずため息を漏らした。

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