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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

 朝目覚めると、いつものように西嶋の匂いを探して寝返りをうつ。自分以外の気配を感じないシングルベッド。涼子は、頭まで被り直した布団の中でうずくまった。

 今日はどこに行ってなにをしようかと、温かい暗闇の中で考える。グラスゴーの街をあてもなく歩こうか、それとも少し遠くの地域に足を伸ばしてみようか。仰向けになって掛け布団から顔を出し、んー、と声を発しながら思いきり伸びをする。

――行きたいところに行けばいいのよ。自由に、一人で。

 言い聞かせ、勢いよくベッドから降りた。窓際に歩み寄り、一日の始まりを感じようとカーテンを開ける。

「……雨か」

 垂れこめた雲が、霧のように細かい雨を降らせている。濡れ景色に出鼻を挫かれたような気分になり、涼子は苦笑した。
 日本にもこの雨が降りそそいでいないだろうか。一日の終わりを告げる夕方の雨空を、窓辺に立ってコーヒーを飲みながら眺める長身の後ろ姿を想像した。


 朝食は、フル・スコティッシュ・ブレックファストを頂いた。
 大きな皿に、ベーコン、ソーセージ、目玉焼き、ベイクドビーンズ、ポテトスコーン、焼きトマト、焼きマッシュルーム、ブラックプディング――豚の血が混ぜられたソーセージ――が盛られていた。そのボリュームには驚かされたがどれも美味しく、昼食はいらないと思うほど充実した食事がとれた。

 部屋に戻るなり、涼子はセーターの上から厚手の防水ジャケットを羽織った。防水加工されたショルダーバッグを肩にかけ、部屋をあとにする。
 外に出ると、駐車場に停めてある車に乗りこみ、エンジンをかけた。

「よし、行くわよ」

 自分に気合いを入れて、ゆっくりとアクセルを踏んだ。

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