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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

 その既視感を覚えたのは婦人も同じだったようで、席を立って温かなハグをくれると、若々しい笑顔で彼女は言った。

「やっぱり懐かしいわ。前世では姉妹だったのかしら」

 テーブル席に一緒に座らせてもらうことになり、涼子は店主にグレンファークラス105を注文した。ウイスキーの注がれたグラスを持って席に向かうと、婦人の隣に腰かけた。

「涼子と言います。またお会いできて嬉しいです」
「ルルよ。こっちは夫のナオカズ」
「涼子さん、私もまた会えて嬉しいよ」

 紳士的な直和(なおかず)、陽気なルル。二人は夫婦だった。美術館では直和の後ろ姿しか見なかったので、涼子はてっきりスコットランド人の夫婦だと思いこんでいたのだ。

 今日も、直和はグレンファークラスを飲んでいる。ルルのほうは――聞いてみると、クレイゲラキだった。

「昨日、クレイゲラキ村に行ってきたんです」
「まあ、そうなの。素敵なところよね」
「はい。とても」

 ルルと話していると、直和がなにかを思い出したような顔をした。

「息子がバーを営んでいるんだが、開業する前に一度行ったと聞いたことがあるよ」
「そうですか。息子さんがいらっしゃるのですね」
「二人いるよ」
「お二人とも、近くにお住まいで?」
「下の息子はロンドンに住んでいるから、まあそう遠くはないんだが、上の息子は日本にいるんだ。バーを経営しているのは長男のほうさ」
「……それは、寂しいですね」

 直和は首を横に振り、濃い琥珀色に染まるグラスを揺らした。

「私にはこいつがあるからいいんだ」

 そうして、彼は昔話を聞かせてくれた。

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