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琥珀色に染まるとき
第23章 いつか無色透明の愛が

「……っ、景仁さん」
「ん?」
「今日はもう休んだほうが……」
「どうして」
「だって、疲れてるでしょう?」

 首を後ろにひねってその表情を窺えば、穏やかだがたしかに欲を孕んだ艶やかな笑みを返される。大きな手で頬を包まれた次の瞬間、ヘーゼルの瞳がゆっくりと近づいてきた。

「あ、でも……ご両親もいるし」
「もう寝てるさ。部屋も離れてるし。でも声は我慢してくれよ」
「え、そんなの無理」

 低く笑った彼が、つぶやいた。

「たった一ヶ月耐えるのがこんなにつらいとは……まるでガキだな」

 苦笑混じりに発せられたその言葉の裏にあるのは、抑制されていた男の欲望。そういえば、怪我をしてからほとんど毎日一緒にいたのに、一度もしていなかった。

「疲れてるくせに」
「お前な、さっきから俺を年寄り扱いしすぎだ」
「年寄りって……」

 ひっそりと笑うと、はだけた肩をそっと掴まれた。

「ここ、もう痛くないか?」

 優しく撫でられるだけの肩は、じわりと熱を帯びる。怪我の痛みなど、もうとっくに癒えている。

「……平気」
「怖くないか」
「…………」

 無言で頷けば、彼は安心したように目尻を下げた。

 腰にまわされた温かい手に抱きかかえられ、その広い胸の上にうつ伏せで乗せられると、長い暗髪が彼の首元に垂れた。彼はそれを優しい手つきで耳にかけてくれる。
 背中を撫でるその手は心をほぐす。身体の奥に灯った小さな炎がゆっくりと全身を温めていくように、柔らかな感情が涼子の胸を満たしていた。

「ねえ」
「ん?」
「幸せになっていいのかしら、私」
「当たり前だ」
「それなら、やっぱりあなたとがいいの」
「……そうでなかったら困るよ。他に誰がいる」

 拗ねたような声色と、すがるように見上げてくる瞳に、思わず口元がゆるんでしまう。すると、彼の身体の上でおとなしく閉じている脚を強引に開かされた。

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