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琥珀色に染まるとき
第4章 虚しい戯れのあとは

くたりと力を失くしている細い身体をうつ伏せにし、腰を持ち上げて四つん這いにさせる。さきほどまで指を呑み込んでいたぬかるみに、景仁は避妊具をまとわせた自身をあてがった。
「あっ! ま、待って……!」
女の声を無視し、一気に突き入れる。
「ああああっ!」
「もう待つ必要なんてないでしょう? ほら」
かすれた低音を落とし、激しく突き上げる。女の泣き叫ぶような嬌声と、腰を尻に打ちつける乾いた音が、部屋中に響き渡った――。
それから散々喘ぎながら何度も絶頂を迎えた女は、やはりまた気を失ったように眠りに落ちた。そんな無防備な女の姿を尻目に、景仁は自身の心を占領する虚しさの理由を考えていた。
***
午前九時半。
夜には煌々と輝いて人々を欲望の渦へ誘いこんでいたネオンはすっかり消え、かわりに明るい日差しが路地を照らしている。眠らない街が眠る時間だ。
建ち並ぶ雑居ビルの下、梅雨の晴れ間から覗く太陽を見上げ、景仁はまぶしさに目を細めた。不快感を覚えてシャツの袖をまくる。この時期の晴れの日は湿度が高く、じめじめとして暑い。
目の前に一台のタクシーが止まった。隣に立つ女に乗るよう促したが、なぜか抱きつかれる。
「あんた、本当に素敵だった」
「あなたこそ」
細い肩を優しく支え、心にもないことを言う。そんな本心を知らない女は、上目遣いで甘く微笑んだ。
一度限りの関係が終わりを迎えるとき――それは、女にとって気分のいいものであるべきだ。少なくとも、欲望の捌け口にされたという悔いを残さない程度には……。
女を乗せたタクシーが走り去ると、景仁はおもむろに歩き出した。少し疲れていたが、さきほどからずっと胸につかえていることを考えながら歩きたいと思ったのだ。

