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琥珀色に染まるとき
第24章 THE NEARNESS OF YOU

 大麦を水に浸す作業を二日かけておこなったあと、このように床に広げて発芽させていくのだが、その際、麦の温度を適切な範囲に保つこと、酸素を供給すること、成長する根が絡まらないようにすることが必要となる。そのため、室内の温度調節はその日の気候に合わせて窓を開閉し、麦層は温度を測りながら四時間毎に撹拌(かくはん)する。
 この作業に使用する道具が重く、熟練が要求されるうえ、二十四時間体制で麦の状態を見なければならない職人技だ。見学客もその作業を体験させてもらえることになり、イングランドから来たという青年が鋤(すき)を手で引いて麦層をほぐすのを試みていたが、それを見る限りかなりの重労働であることがわかった。

 続いて、キルン内部を覗かせてもらう。蒸溜所に到着したとき、一番に目に入った乾燥棟だ。薄暗い空間にはピート香と煙が漂い、部屋の奥に一つだけある小さな窓からは外光が差しこんでいる。
 まだ湿っている状態の発芽大麦を細かい網目状のフロアに広げ、下からピート――泥炭を焚いて十五時間燻し薫香をつけてから、熱風を吹きこんで四十五時間かけて乾燥させるのである。
 全島の四分の一がピート湿原に覆われているアイラ島。アイラモルトの特徴である強いスモーキーフレーバーは、このときに焚くピートの量によるものだ。

 こうして手間をかけて作られたモルトは、次の工程へと移される。石やごみを取り除く機械に通されたあと、粉砕機で砕かれたモルトは、発酵に必要な糖液――ウォートを得るため、マッシュタンと呼ばれる糖化槽にて熱湯と混合される。
 糖化をおこなう部屋に足を踏み入れた一同は、そこに鎮座する円筒状の巨大設備を前にしてどよめいた。想像を超える大きさのマッシュタンに、景仁と涼子も思わず唸り声をあげる。見学客のうちの誰かが、世界最大ではないか、と質問すると、女性ガイドはこう答えた。

「カリラには負けます」

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