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琥珀色に染まるとき
第24章 THE NEARNESS OF YOU

 そのほかにも数種類、自分で希望したものを飲ませてもらうことができ、それに合うつまみも出された。

「一度にこんなに飲むの、初めてかも……」

 隣から、涼子の弱々しい声が聞こえてくる。自身の前に並ぶ三つのグラスを、不安げに見つめている。景仁の店では一杯ずつじっくりと時間をかけて味わう彼女にとって、何種類もの、しかもそこそこの量のウイスキーを飲み比べるなど、萎縮せずにはいられないのだろう。

「無理して飲まなくていいぞ。俺がお前の分も飲んでやるから」
「自分が飲みたいだけでしょ」

 小さな声で囁いた涼子は、その赤い唇をわずかに尖らせる。
 景仁は、そこに指を添えて彼女の口を開かせると、酒のつまみとして置いてあるダークチョコレートの欠片を入れてやった。ためらいがちに従うその小さな口は、甘苦い侵入物を受け入れてもごもごと動き始める。

「そう、ゆっくり愉しめばいい。ウイスキーは慌てて飲んでも美味くないからな」
「ん……」

 短い返事のあと、彼女はどこか安心したような表情を浮かべた。

 ウイスキーについて語り合う人々の声を背景に、愛する女と肩を並べ、ゆったりと過ぎていく時間に身を委ねる。少しの開放感と、妙な安心感。いつまでもこの感覚の中に浸り続けたい思いながら、景仁はグラスを傾けた。

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