この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第24章 THE NEARNESS OF YOU

「やっぱりぜんぜん酔わないのね」
「そういうお前はもう酔ってるな。そろそろ部屋に戻るか」
「うーん……」

 言葉を濁す彼女は、とろり、とろり、と色気のあるまばたきを繰り返す。白目が少し充血している。

「眠いんだろ?」
「ちょっとね……でもやりたいことがあるの」
「なんだ」
「外を歩きたい」
「散歩か。夜なのに」
「うん。夜の海を見てみたいから」

 ホテルの外に出ると、雨上がりの気配が漂っていた。外灯に照らされた地面が濡れている。どうやら軽く降ったようだ。
 夜ともなるとさすがに気温は下がり、頬をかすめる風の冷たさは凍りつくようだ。涼子の酔いも醒めるだろう。

 メインストリートに繋がる交差点まで歩き、右に折れれば海は目と鼻の先である。厚いロングコート越しでも感じる冷たい風の中、静かな波の音に導かれるように、港へ続く暗い道を進む。
 小さな港湾に並ぶ数隻の船。それらを守るようにゆるやかなくの字を描く細長い防波堤が、陸から海に向かって伸びている。
 そこに登ろうとしたところで、後ろから涼子が声をかけてきた。

「ねえ、危ないわよ」
「大丈夫。ここからボウモア蒸溜所がよく見えるぞ」
「え、そうなの?」

 好奇心を孕んだ声。蒸溜所の全体像を海側から眺めることに興味が湧いたのだろう。

「おいで」

 手を差し出せば、そっと重ねられる冷たく柔らかな感触。その細い手を掴み、引き上げてやった。
 漆黒の海を見下ろしてこわばる彼女の身体を抱き寄せ、景仁は百メートルほど先の陸地に佇む建物を指差した。

「ほら、あれだよ」
「わ……すごい」

 薄闇の中に青白く浮かび上がる蒸溜所の白壁。そこに大きく、“BOWMORE”の文字が描かれているのが見える。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ