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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

第二十五章 Clayのもとへ還る心
「涼子」
背後で扉の閉まる音がした直後、聞こえたのは、愛しい人の声。
全身を痺れさせるようなその低音にゆっくりと振り返れば、冷えきった左手首をそっと掴まれ、彼の口元へ持っていかれる。手のひらに優しく押し当てられた唇は柔らかく、向けられる視線は、熱い。
静かなホテルの部屋で、二人だけの特別な夜が始まる。そう、今夜はきっと特別な夜になると、なにかが予感させるのだ。
手のひらから唇が離されると、涼子は左右の手で西嶋の頬を包んだ。その顔を引き寄せれば、彼は優しい微笑みでそれを受け入れ、身をかがめる。涼子はつま先立ちになり、唇が触れそうな距離まで近づいた。そのまましばらく見つめ合ったあと、ヘーゼルの瞳が揺れると彼は顔を傾けた。
「……っ」
唇の感触を確かめるようになぞり、互いの息遣いを感じながら柔いキスを繰り返す。
すばやくコートを脱ぎ捨てた彼を追うように自ら上着を脱ぐと、腰を抱き寄せられ、涼子も彼の首の後ろに腕を回した。ああ、と彼が艶のある吐息を漏らしたのを合図に、抱き合う手に力がこもる。
「んっ……は……」
深くなる口づけは、互いの吐息に混じるウイスキーの香りをいっそう強く感じさせた。まるで酔いが回るかのように、その香りは思考を狂わせていく。
自ら舌を差し出すと、彼もそれに応えてくれる。ときおり、濡れた舌を交互に吸い合い、また絡ませる。湿った音が脳内に響いてめまいがした。

