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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

***

 翌日は、カリラやラガヴーリン、アードベッグなど、互いの好きな銘柄の蒸溜所を巡り、見学や試飲を愉しんだ。
 車での移動中も旅を彩る素敵な時間で、羊の群れが歩く草原、雨上がりの空にかかる虹、海沿いのドライブを愉しむ西嶋の横顔、そして、一日運転に徹してくれた彼が、小瓶につめて持ち帰ったウイスキーをホテルの部屋で飲む姿――視界に入るすべてが心を躍らせたのだった。
 ハードスケジュールではあったが、アイラ島に滞在した二日間は涼子の心を浄化した。


 グラスゴーに帰った次の日は、西嶋の両親も一緒に市内の観光名所を巡った。

 曇天の下に構える大聖堂の、長い歴史を感じさせる黒ずんだ石壁はおどろおどろしかった。
 内部の荘重なアーチや高い木造天井に圧倒され、身廊の先に待つ内陣の厳かな空気に息をのみ、外光を背に美しく輝くステンドグラスにため息を漏らした。

 大聖堂から遠くの丘に見えた巨大なモニュメントに惹かれ、向かったのはまるで遺跡のような広大な共同墓地だった。
 一つひとつデザインも大きさも違う古い墓を眺めながら、ケルト十字の石を探してまわり、丘の上からグラスゴーの街を見下ろした。

 地元の人の憩いの場である市庁舎広場では、随所に設置されている彫像の中でひときわ高くそびえ立つ塔を眺め、その上部に佇むスコットランドの詩人ウォルター・スコット卿の像を見上げた。
 直和が教えてくれたその詩人の名言は、心に突き刺さった。

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