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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

 その翌日、グラスゴーで過ごす最後の日は、西嶋と二人で街の中心部を散策をすることにした。

 街中に着いたバスを降りると、ふと左手を差し出された。そっと伸ばした右手を掴まれ、手のひらが重なり、骨ばった指が絡められる。
 ただそれだけで身体がじわりと火照るその瞬間は、自分の中にある彼の存在の大きさを思い知らせる。

 石造りの建物が、重々しい迫力を演出する街並み。のんびり散策するうちに、有名な目抜き通りに入った。美しい石畳みが続く歩行者天国は、日曜ということもあって人通りが多く、地元の人や観光客が行き来する様子はやはり都会的だ。
 洋服店や雑貨屋、カフェなどが並ぶメインストリートを、西嶋と手を繋いであてもなく歩く。両脇には、風格ある古い建物と近代的なビルが共存してそびえ立つ。

 かつて貿易や造船業で栄えた工業都市は、時代とともに一度衰退したが、今や若者が集まるスタイリッシュな文化都市へと再生を遂げた。
 伝統を残しつつも必要な変化は許容する。その歴史を象徴するような、過去と現在の調和を感じさせる街並みを眺めながら、西嶋は静かに言った。

「最後に来たのはいつだったかな。今の店を出す前だから、八年前か。今のお前と同じ年の頃だな」
「……景仁さん、今いくつだっけ」
「三十八になる」
「いつ?」
「明日」
「えっ、ごめんなさい。聞かなくて」
「いいさ。俺も言わなかったし、お互い様だ」

 そう言って、彼は微笑む。淡い日の光に晒された柔らかな髪が余計に明るく見えるが、美しい横顔にはまったく違和感がない。

「やっぱり、全然見えない。最初同い年くらいかと思ったもの」
「意外とオジサンで残念だったな」
「違う……自分の八年後を想像して恐ろしくなったの。そんなに若くいられる自信がなくて」
「楽しみだな。年取ってくお前を見るの」

 しばらくその言葉を反芻したあと、はっとして右側を見上げると、前を見据える横顔は口元をほころばせていた。

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