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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

 そのときに胸が高鳴ったのは、その笑顔が美しかったからだけではない。これから先も、彼とこんなふうに手を繋ぎながら年を重ねていきたい――心に芽生えたその想いを、涼子自身が強く自覚したからだ。
 手を繋いだまま西嶋の腕にぴたりと身体を寄せると、優しく手を握り直してくれる。いちいち愛を感じるその行為に涙が湧きそうだ。

 ブランドショップが軒を連ねる中、のんびりとウィンドーショッピングを愉しむ。ある店を目にすると彼は、ここに入ろう、と言った。高級そうなブティックに驚いて彼を見上げれば、そこにはなにかを企んでいるような妖しい笑顔があった。
 背の高い重厚な扉の向こうには、洗練された空間が広がっていた。知的さを秘めた、シックで女性らしいデザインのドレスが並ぶ。

「お前の好みかなと思って」

 微笑む西嶋に、涼子は心からの笑みを返した。
 近くにいる女性店員と挨拶を交わし、ドレスを見てまわるも、やはり自然と足が向くのは暗い色。マネキンが着ているシンプルな黒いワンピースを見つめていると、それに気づいた彼が横槍を入れてくる。

「たまには明るい色を着てみたらどうだ」
「でも似合わないから」
「似合うさ、なんでも」

 彼は店員に許可を得ると、ハンガーに掛けられている鮮やかなピーコックブルーのドレスを手に取った。身体にフィットする形のオフショルダーワンピースだ。

「これなんかどうだ」
「肩が丸見えよ」
「でも二の腕は隠れるし膝丈だし、大丈夫だ。似合うよ」
「……なにが大丈夫なの」
「いいからちょっと着て見せてくれ」

 彼は店員に、“Can I possibly give it a go?”と声をかけ、勝手に試着を頼んでしまった。笑顔の女性店員に丁寧な仕草で促されればもう逃げ場はない。着るのはタダ、と自分に言い聞かせ、涼子は試着室に入った。

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