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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

「正式にはあのスカートの下はなにも履かないらしい」

 涼子は思わず、男性が身にまとっているキルトスカートに注目した。

「おい。中を想像するなよ」
「してないわよ。さすがに今の時代は履いてるでしょう」
「いや、わからんぞ」
「……変態。ちょっと黙ってて」

 冷たい言葉で突き放すも、彼は心底愉しそうに笑った。
 隣で囁く色男に茶化されながらバグパイプの音色に聴き入ったあとは、再びどこかに向かって歩き、孔雀のオブジェが有名なショッピングモールの近くまで来た。

「そこに行くの?」
「いや、こっちだ」

 立ち止まった彼の背後にそびえ立つのは、古い歴史を感じさせる建物。

「ここって……宝石を扱うお店が多いのよね」
「ああ。よく知ってるな」
「旅行するにあたって一応調べましたから」
「そうか。なら話は早い」

 腰に触れた彼の手にそっと押され、建物の内部に伸びるアーケードに入った。高級ジュエリーショップ、宝石店、時計店が並ぶ。自分には無縁な店ばかりだと思いながら歩いていると、あるジュエリーショップのショーウィンドウの前で、西嶋が足を止めた。

「お前が好きそうなデザインだな」
「うん、好きよ。素敵」

 ショーウィンドウには、シンプルなデザインのジュエリー並べられている。

「ちょっと中を見てみようか」
「え、いいわよ。別に欲しいものもないし」

 即座に答えれば、哀しげな微笑を返される。

「だって……なに買うの」
「マリッジリング」
「えっ」

 涼子は、自分の左手薬指に触れてみた。いつか西嶋がそうしてくれたように。
 ふと、誕生日に冗談半分で試着させられたエンゲージリングの感触がよみがえる。

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