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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

 この指におさまる約束の証を、今までまったく期待しなかったわけではない。その小さなリングをそこにはめることへの安心感を、かすかな望みを、求める気持ちはたしかにあった。だが、それを切望してはいけないとどこかで感じていた。
 逡巡していると、優しげな声が降る。

「あいかわらず固い頭だ。揉みほぐさないと」

 頭に大きな手が乗せられた。髪に指を通してすくい上げ、指の腹で頭皮を洗うような動きをする。

「なにするの……」
「そろそろ素直になれ」

 触れられたところから、じわじわと頭が柔らかくなっていくような気がした。
 本当はわかっていた。自分の心はもう決まっていると。あとは自分自身がそれを認めてやるだけだ。嘘偽りのない心を。

 ぼさぼさだ、と笑った西嶋は、涼子の乱れた髪を丁寧に撫でつけた。彼の背後では、ショーウィンドウの中でジュエリーが輝きを放っている。なにかを訴えかけるようなその煌めきを見つめ、涼子は口を開いた。

「私、欲張りよ。あなたの一番そばにいたいし、ほかの誰かを護ることも、まだ諦めたくないの」

 彼はその言葉の意味を汲み取ってくれたようで、満足げに口角を上げた。

「それが、お前の覚悟だな?」

 ほかの誰でもない、自分自身が納得できる幸せを掴みたい。それがどんな形であろうと、隣にいるのはこの男であってほしい。
 彼の優しい微笑みに導かれ、涼子は柔和な笑みとともに静かに頷いた。

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