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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

それから、途中で雨に降られので、暗くなる前には西嶋の実家に帰った。
夕食の支度をするルルを手伝い、四人で食卓を囲んだ。今まで経験したことのない、あるいは記憶に残っていないだけかもしれないが、それは深い愛情に満ちた家族の時間だった。
リビングでのんびり直和とウイスキーを愉しんだあと、シャワーを浴びてベッドルームに戻った。
「景仁さんも、お風呂どうぞ」
「なあ。さっき買った服、もう一度着てみせてくれ」
「え、今?」
うん、と答えた彼は、ブランド袋を開けてワンピースを取り出す。こうなると拒否しても無駄なので、涼子は仕方なくガウンの結び目をほどいた。
ベッドに腰かけてこちらを見守る彼に背を向け、ガウンを肩から落とし、素肌の上から上質な生地に身体を通す。ベッドが軋む音がして、彼の気配が背後に立った。ワンピースのファスナーに手をかけられる。
「あっ、自分でできるわ」
「いいから」
低く囁いた彼は、丁寧にファスナーを上げ、露出した肩から腕をするりと撫で下ろす。
振り向くと、すでに彼は後ろにいなかった。箱からハイヒールを取り出し、それを持って足元にひざまずくと、微笑をたたえて見上げてくる。
「脱がせるのもいいけど、履かせるのも乙なものだな」
「ばか……」
足を持ち上げられ、指先にそっと口づけられた。彼が手にしているハイヒールに足を入れられると、まるでおとぎ話の姫になったようだ。
両足に靴を履かせた彼は、満足げに全身を眺める。
「うん。最高だ」
そして、ひざまずいたままズボンのポケットに手を忍ばせた。おもむろに取り出したその手中で、なにかがきらりと光る。
「えっ……」
左手を、取られた――。
中央にダイヤモンドをあしらったプラチナリングが、自分の左手薬指にはめられるその瞬間を、涼子は唖然として見つめた。

