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琥珀色に染まるとき
第25章 Clayのもとへ還る心

 言葉を失っていると、彼はふっと小さく噴き出し、優しい声で言った。

「涼子。結婚しよう」
「……っ」

 その熱いまなざしを受け止め、涼子は静かに頷いた。しかし、昂る感情が唇を震わせるせいで、うまく声が出せない。あっという間に視界が滲む。

 “当たり前よ”
 “ありがとう”
 “嬉しい”
 “よろしくお願いします”

 一瞬にして様々な言葉が頭をよぎったが、心の奥に湧き上がる想いにはすべて当てはまらない気がした。自ら孤独を選んできた、ひび割れだらけの心を満たすのは、優しく温かい“なにか”――。

「景仁さん……」
「ん?」

 穏やかな声で返事をする彼の瞳には、愛おしさが宿っている。偽りのないその目に見つめられれば、愛されている、必要とされていると実感できる。
 その温かな視線の中で、ときに激しい波に翻弄され、またあるときにはゆっくりと羽を休め、この心はこれからも永遠に、彼のもとにあり続けるだろう。
 この気持ちをどう表現したらいいのだろうと探し求めた結果、涼子は一つの言葉にたどりついた。

「あい、してる」

 彼のもとにしゃがみこみ、その肩に勢いよくしがみついた。尻もちをついて驚く彼に、隙間がなくなるほど強く抱きついた。
 耳元に顔をうずめ、その小さな穴からこの想いが全身に響き渡るように囁く。

「愛してる」

 何度でも。

「愛してるわ。景仁さん」

 背に回された腕に、息ができないほど強く抱きしめらた。

「涼子……」

 かすれた声で名前を呼んだきり、西嶋はなにも言わない。しばらくその甘い沈黙に耳を澄ましていたが、その空気に違和感を覚え、涼子は思わず呟いた。

「泣いてるの?」

 不意に、肩を掴まれて上体を少しだけ離された。その顔を目の当たりにする。彼の頬は濡れてはいなかったが、穏やかに微笑むその表情は、まるで涙を流しているように見えた。

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