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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき

小夜子が無言で頷く。
「根本的な解決を目指すうえで、ストーカー加害者を理解しようとすることはたしかに大事よ。加害者に対してカウンセリングを受けさせる動きも徐々に増えている。でも、私がこれからも優先して貫きたいのは、ストーカー被害に苦しむ人々に寄り添うこと。目の前にいる護るべき人を護れずに、根本的な解決なんて望めないと思うから」
目の前で涙ぐむ小夜子を見つめ、涼子は粛々と語った。
「私、ひがんでた。強くて、綺麗で、みんなに慕われてる涼子さんが、うらやましかったんだ。ごめんね……」
小夜子はそう言って微笑んだあと、俯き加減に続けた。
「ブスで暗い自分が嫌で、田舎から出てきたけど仕事がなくて、やっと見つけたキャバクラの仕事でもうまくいかなくて……そんなときに雅人がお店に来たの。最初は優しかった。私、すぐに心を許しちゃってさ……。だから彼があんなふうに変わっちゃったのは、私のせいだと思ってた。でもあの人は、私と出会う前から私なんかの手には負えなかった。私はなにも見えてなかった」
それまで黙っていた藤堂が、口を開いた。
「今ならもう見えるだろ。他人のことも、自分のことも」
「……うん。見える」
「なら、お前は大丈夫だ」
「うん」
「たまには顔見せに来い」
「……っ、うん」
ぽろぽろと涙を流しながら頷いた彼女は、“明美”という名にふさわしい笑みを浮かべた。

