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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき
タツも同じく二人と挨拶を交わしたが、あいている城戸と響の間ではなく、佐伯の隣に座った。
「おう、理香。元気か」
「ええ。達朗さんもお元気そうでなにより。あいかわらずお洒落ね」
「お前こそますます綺麗になりやがって。なにかいいことでもあったか」
その問いに佐伯が答えるより先に、カウンターの向こうで藤堂が咳払いをした。もともと彼が座っていた席に自分がいることを知ってか知らでか、タツは愉快そうに笑う。
「なんだよ、そんな仏頂面して。眉間にしわ寄せてばかりいると老けちまうぞ」
そんなタツの前でワイルドターキーのオン・ザ・ロックを作っていた藤堂は、それを静かに差し出して言う。
「オッサンは黙って飲んでいてくれ」
「おいおい、オッサンだなんてひどいじゃないか。兄貴に向かって」
「半分だけな」
「厳しいねえ」
藤堂の切れ長の目とすっきりした顔立ちは、タツの彫りの深いそれとはまったくと言っていいほど違う。この日を迎えるにあたり、あらかじめ西嶋から彼らのことは聞いていたが、やはり信じがたい。
ふと、氷の微笑を浮かべる藤堂と目が合った。見えない光線が痛くて視線をそらすと、あきらかにおもしろがっている表情の西嶋と目が合う。すっかり城戸のお気に入りとなったジンフィズを造っているようで、なにか言ってくれる気配はない。
助け船を出したのは、ニューヨークを飲み干した佐伯だ。
「鋭い涼子ちゃんですら言われなきゃ気づかなかったなんて、よほど似てないのね。息子は母親に似るって本当なのねぇ」
佐伯はタツの持つグラスを指差しながら、私も同じものお願い、と言った。藤堂は渋々といった様子でカクテルグラスを下げ、カウンターの上にロックグラスを用意する。