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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき
それからは終始和やかな雰囲気の中、談笑を愉しんだ。西嶋と旅したアイラ島の土産話から、皆の昔話まで、話題は様々であった。
日付が変わる前にパーティーはお開きとなった。西嶋が扉の前に立ち、参加者たちを見送る。
飛び交う言葉たち。そのどれもが、西嶋への感謝と愛に溢れていた。一つひとつの声に丁寧に応える彼の表情は優しく、幸福に満ちているように見えた。
少し離れたところに立ってそれを眺めていると、佐伯が身体を寄せてきた。
「体調はどう?」
「大丈夫です。今夜はありがとうございました」
「久しぶりにたくさんお喋りできて楽しかったわ。なんだか悪いわね、涼子ちゃんたちのお祝いだったのに私たちがご馳走になっちゃって。お土産まで頂いたし」
言いながら、彼女は手に提げている袋に目をやった。アイラ島でしか手に入らない限定品のウイスキーだ。
「ねえ。結婚式はするの?」
「それはまだ、未定で……」
「あら、だめよ。二人だけの挙式でもいいから、やりなさい」
佐伯の背後に、藤堂がすっと現れた。こほん、とわざとらしく咳をする。
「そろそろ行くぞ。あまり長居すると迷惑だろう」
佐伯の手から土産袋を取り、彼女が口答えする前にその手を掴んだ。じゃあまた、と言い残し、そのまま佐伯を連れて出ていく。それを唖然と眺めていた響と城戸は、顔を見合わせ含み笑いを浮かべた。
涼子は、佐伯が呼び名に関する賭けを口にしていたことを思い出した。社長秘書でなくなった彼は、彼女を名前で呼んでいるのだろうか。藤堂の腕にもたれるようにして寄り添うその女性らしい後ろ姿を見れば、その答えは明白だった。
タツが愉快そうに笑う。
「女だけに見せる男の素顔なんてのは、たいていあんなものだ。シンのやつ、すっかり丸くなりやがった」
昔を懐かしむように言うと、片手を上げて去っていく。