この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき
――死んで、土に還る。
それが彼の人生にとって、意味のある言葉であってほしい。涼子はふと、そう思った。
密着させていた身体を離し、彼と正面から向き合う。愛おしくてたまらない人に、想いを告げる。
「あなたは土に還り、誰かが見つけてくれるのを待っていた。ここで眠りながら、ずっと。そして、私があなたに会いにきた。あなたは私を待っていたの。その出会いはあなたにとって、なにものにもかえがたい大切な縁だった。哀しい現実を突きつけられた。でもきっと、不幸な運命じゃない。幸せな、運命だったのよ……」
最後は声が震えて吐息が漏れた。都合のいいお伽話のようなストーリー。彼の耳にはどう届いただろうか。
「……やっぱり馬鹿みたいよね。夢見る少女じゃあるまいし」
嘲笑していると、困ったような笑みを浮かべた彼は、そんなことない、と穏やかな声で否定した。そして、優しく微笑んだ。
「ありがとう」
心底愛おしそうにこちらを見つめる彼は、額に優しいキスをくれた。頬にもそっと口づけると、今度は撫でるように唇を重ねてきた。抑えようのない熱情というよりは、木漏れ日が淡く降りそそぐような、柔らかなぬくもり。
視界を覆いきった涙が、静かに頬を伝った。それに気づいた彼は、濡れた頬を唇でそっと拭い、苦笑した。