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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき


――死んで、土に還る。


 それが彼の人生にとって、意味のある言葉であってほしい。涼子はふと、そう思った。
 密着させていた身体を離し、彼と正面から向き合う。愛おしくてたまらない人に、想いを告げる。

「あなたは土に還り、誰かが見つけてくれるのを待っていた。ここで眠りながら、ずっと。そして、私があなたに会いにきた。あなたは私を待っていたの。その出会いはあなたにとって、なにものにもかえがたい大切な縁だった。哀しい現実を突きつけられた。でもきっと、不幸な運命じゃない。幸せな、運命だったのよ……」

 最後は声が震えて吐息が漏れた。都合のいいお伽話のようなストーリー。彼の耳にはどう届いただろうか。

「……やっぱり馬鹿みたいよね。夢見る少女じゃあるまいし」

 嘲笑していると、困ったような笑みを浮かべた彼は、そんなことない、と穏やかな声で否定した。そして、優しく微笑んだ。

「ありがとう」

 心底愛おしそうにこちらを見つめる彼は、額に優しいキスをくれた。頬にもそっと口づけると、今度は撫でるように唇を重ねてきた。抑えようのない熱情というよりは、木漏れ日が淡く降りそそぐような、柔らかなぬくもり。
 視界を覆いきった涙が、静かに頬を伝った。それに気づいた彼は、濡れた頬を唇でそっと拭い、苦笑した。

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