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琥珀色に染まるとき
第1章 雨に濡れたボディーガード

 通常の身辺警護のほかに、私邸警備、通勤通学の送迎警護、海外出張や旅行の同行警護兼通訳など、涼子がこれまで担当してきた案件は多岐にわたるが、どの案件でも初回の打ち合わせを最重要視してきた。

 最も大切なのは、依頼人の心に寄り添い、絶対的な安心感を与えること――。

 なにかしらの事情を抱え、それについて少なからず不安を抱いている依頼人たちの姿を、この目で幾度となく見てきた末にたどりついた信念だ。

 事前に確認した情報によると――依頼人の名前は、佐伯理香(さえきりか)。四十歳、女性。女の一人旅をサポートする、旅行コンサルティング会社を経営する社長。依頼内容は海外出張の同行警護、期間は一週間。
 海外への同行警護経験のある涼子と、同じく経験豊富な三人の警護員が担当することになっている。
 内戦が起こる危険地域での商談などに比べれば、今回の案件はリスクが低いといえる。しかし、女性を狙った性犯罪の発生率が高い発展途上国が出張先となると、油断はできない。警護依頼は賢明な選択だろう。


 涼子は、具体的な警護計画を頭の中に描きながら颯爽と歩き続ける。

 そのとき、傘も差さずに小走りで向かってくる女とすれ違った。
 派手な化粧が似合うはっきりとした顔は緊迫感に満ちており、揺れ動く明るいストレートヘアが印象的だった。
 少し間をあけ、黒い傘で顔を隠すようにしながら大股で歩く男が通り過ぎた。その際に互いの傘がぶつかったが、男は舌打ちだけすると再び前方を気にしながら歩き去っていく。

――あの女を追っている。

 直感的に感じ取った涼子はすぐに方向転換し、男のあとを追った。

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