この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第5章 雨音に誘われて

 城戸がテーブルに身を乗り出したとき、オムライスが届いた。大きな身体は気まずそうに椅子にもたれる。

「冷めちゃう前に食べたら?」
「……じゃあ、とりあえず」

 その一言のあと、味わうということを知らないのではないかと思わせるような早食いを披露する城戸を眺めながら、涼子は静かにコーヒーを味わった。


――今から四年前。
 S警護事務所に入社した城戸は、すでに他社で三年の実務経験があり、当時二十三歳と若いながらも十分に優秀な人材であった。
 物怖じしない馴れ馴れしいほどの態度に、初めは困惑と少しばかり軽蔑の念を抱いた涼子だったが、一緒に任務をこなすうちに、いつの間にかそのペースに乗せられていた。といっても、仲良くお喋りするというわけではない。勝手に懐いてしつこく構ってくる子犬を軽くあしらう野良猫――ほかの同僚たちには、そんなふうに見えていたに違いない。
 そうして奇妙な信頼関係が築かれてきた頃、今回のように二人はコンビを組み、ストーカー被害に悩む女性の身辺警護を担当した。

 女性をストーキングしていたのは、彼女の元交際相手だった。交際当初から束縛が激しく、彼女が別れを切り出してから迷惑電話やつきまとい行為が始まり、日に日にエスカレートしていった。だが、女性は警察に被害届を出せずにいた。
 なぜなら、彼女は不安だったからだ。警察に相談しても、痴情のもつれとして真剣に取り合ってもらえないかもしれない。通報がストーカーに知られることで、行為が悪質化するかもしれない。事件性、もしくは実害がないと対応してもらえない――そういった世間に蔓延するイメージが、彼女の足をすくませていた。

 なによりも、相手が自分と深い関わりのある人間だという事実が、彼女を追いつめていた。
 自業自得――脳裏にちらつくその言葉に振りまわされ、女性は後悔と恐怖の日々を過ごしていた。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ