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琥珀色に染まるとき
第5章 雨音に誘われて

「もう一度警察に相談してみる気はあるかな」

 城戸が優しく尋ねるも、明美は首を横に振る。城戸がこちらに視線を送ってくる。
 続けて――と涼子が目で合図すると、彼は再び口を開いた。

「お店の人や、ご家族には相談した?」
「……いえ」
「どうして?」
「ストーカーしてる人、前勤めてたとこの常連なの。だから、今のお店のママには迷惑かけたくないし……。それに、家族は、田舎にいる父親だけだから……」

 明美が言葉を詰まらせたとき、アイスティーが運ばれてきた。重苦しい空気を感じ取った店員は、もう誰にも好奇の目を向けずにそそくさと戻っていった。

「警察の人も丁寧に話を聞いてくれたけど、すぐになにかしてくれるって感じじゃなかったし、ほかに頼れる人がいないの」
「もちろん、明美さんのことは僕たちが護るよ」

 城戸の力強い返事に息を呑んだ彼女は、テーブルの上に置いたこぶしを握りしめ、声を低くした。

「あいつに言われたの。もう警察には言うなって。どこにいても、いつも見てるって。怖いよ……」

 震えるその手を、涼子はそっと包む。

「私たちがいるから大丈夫。どこにいても、いつも、私たちがあなたを護る」
「あ、ありがとう、東雲さん」
「涼子でいいわ」
「うん、涼子さん。……ふふ」

 明美が作り物ではない笑顔を見せたところで、涼子も柔和な笑みを返した。

「明美さん、約束してほしいことがあるの」
「約束?」
「そう。あなたを護るために必要なことよ」

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