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琥珀色に染まるとき
第5章 雨音に誘われて

***

「なんかお前、いつもより熱入ってなかった?」

 明美を乗せたタクシーを見送りながら、城戸が言った。
 タクシーが角を曲がり、完全に見えなくなったところで、涼子は雨上がりの空を見上げた。灰色の雲の隙間から薄い光が降りそそいでいる。

「いつもどおりよ」

 そっけなく答え、駅に向かう道を歩き出した。

「乗ってけよ。俺、車だから」
「事務所に行って警護プランの資料をまとめておきたいから」
「だから一緒に」
「城戸くんは休日返上で来てるんだから、早く帰って休んで」
「別に大丈夫だから、行くぞ」

 反対方向に歩き出した城戸の大きな後ろ姿を見つめ、涼子は苦笑した。

 赤色に輝く国産スポーツカーの助手席に乗りこむと、身体を包むような形のシートに背を預けた。低いエンジン音が響く。
 若者の車離れが叫ばれている昨今にはめずらしく、城戸は自他ともに認める車好きだ。この車の名前である“数字”を聞いても涼子にはぴんとこないが、わかる人にはわかるらしい。ギアチェンジを自分でする必要のあるマニュアル車をあえて私用に選ぶのも、それが運転の醍醐味だからだろう。
 音量を落としたR&Bが流れる中、地を這うような車高の低さと上下の振動に少々圧倒されながら、おとなしく揺れに身を任せる。

 ふと、ハンドルを握る城戸が呟いた。

「大丈夫かな、あの子。ちゃんと言えるかな」

 明美と交わした約束のことを言っているのだろう。
 その内容は三つだ。被害に遭っている事実を第三者に認識しておいてもらうため、勤め先のママに報告すること。ストーカーの逆上を防ぐため、ストーカーとの接触を完全には断たないこと。そしてもう一つは、父親に知らせること。

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