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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

 初めから本気で殺す気なら、揉み合いになる直前にナイフを出し、不意打ちで刺すほうがいい。威嚇するため衝動的に出したとしか思えないが、それでもこんな物騒なものを一対一の状態で振りまわされれば十分危険だ。明美を襲ったときのように突進されでもしたらなおのこと。ここで背を向けたら終わりだろう。
 やるしかない――心の中で決意を固め、汗ばむ手を握りしめた。

「そこまでにしておけ」

 背後から低い声がした。城戸かと思ったが声質が違う。振り返ると、ビルから出てきた黒いスーツ姿の男が不機嫌そうに顔をしかめていた。

「藤堂さん? どうして」
「話はあとだ。先にこいつを片づける」

 藤堂は冷たく言い放った。もともとの印象とはかけ離れたその態度を目の当たりにし、涼子は自分が立たされている状況を忘れそうになる。

「お前が小林か」
「なんだてめぇ、誰だよ!」
「ちょっと黙ってろ」

 鋭い眼光を向けられて逃げ場を失った小林は、ナイフを構えて奇声をあげながらこちらに襲いかかってきた。とっさに身体を半回転させて男の進行方向から避けると、真っ直ぐに突き出されたナイフが空気を裂く。
 次の瞬間、涼子が男の腕を掴むより先に、藤堂がその腕をひねり上げていた。痛みに耐えかねた小林がナイフを手放すと、それは地面に落ちてかしゃりと音を立てた。

 抵抗する余裕をなくしてもなお、小林は見開いた目から常軌を逸したまなざしを向けてくる。その目におぞましい記憶を呼び起こされそうになったが、藤堂の舌打ちの音がそれを阻んだ。

「お前のやっていることは犯罪だ。いかなる理由があろうと、それが事実だ。自覚しろ」

 重く威厳のある声が、静かな路地に落とされた。

「俺はただ話を……小夜子と話をさせろ……小夜子……!」

 それから、身柄を拘束されパトカーに乗せられる寸前まで、男は女の名を叫び続けていた。

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