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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

「大丈夫なのかよ」
「もちろん。心配なのは、私より明美さんでしょ」
「……明美さんは?」
「たぶん七階のお店にいると思う」
「どうする?」
「とりあえず私だけで話を聞いてみる。城戸くんは事務所に戻って」
「一緒にいなくていい?」
「大丈夫よ」
「了解。ボスへの報告は俺がしとく」
「ありがとう」
「なにかあったらすぐに連絡しろよ」
「わかったわ」

 微笑を浮かべて答えれば、そこで初めて腕を放された。

 自車に乗りこむ城戸の後ろ姿を見守っていると、不意に背後から足音が聞こえてきた。藤堂と警官が戻ったのだろうと振り返ってみると、そこにいたのは予想外の人物だった。
 心配そうにこちらを見つめる男は、なにかを言おうとして口を開きかけたが、言葉が見つからないのか切なげに眉を寄せる。数秒後、彼はようやく呟いた。

「涼子さん」

 その声を耳にした瞬間、たった今初めて息継ぎをしたかのように、大きく深呼吸することができた。今までなんともなかったのに、吐く息が震えた。

「……西嶋、さん」

 歩み寄るその姿を見上げ、あらためてその身長の高さを実感しながら、震える声を絞り出してその名を呼ぶ。
 両肩をそっと掴まれると、あの日の熱が一瞬にして身体によみがえった。身をかがめて顔を覗きこんでくる西嶋の瞳が、切なげに揺れる。

「藤堂から聞いて、驚いた。怪我はない?」
「大丈夫です。ご迷惑おかけしてすみません……」

 俯き加減に答えながら、目頭が熱くなるのを必死にこらえる。大丈夫、大丈夫、と心の中で唱えてきつく目をつむると、ナイフを持って向かってくる男の形相がまぶたの裏に映し出された。はっとして目を見開き、震える両手を胸の前で握りしめる。

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