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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

 そのとき、人肌のぬくもりに包まれた。気づけば西嶋に抱きしめられていた。

「怖かっただろう。無事でよかった」

 耳元で囁き、彼はその大きな手で背中を何度もさすってくれた。優しく、優しく。その温かな腕の中で、涼子はそっと涙を流した。
 本当は怖くてたまらなかった。このまま、そばにいてほしい――。目の前を覆う広い胸の奥に心の声が届くよう、深く息を吐き出す。声には出さなかった。それでも、察しのいい西嶋には見透かされているかもしれない。

「少しは落ち着いた?」
「はい……すみません」

 頭上から降った優しい声で我にかえり、遠慮がちに身体を離すと、ちょうどビルから警官が出てきたところだった。明美との話は済んだようだ。
 瞬間、低いエンジン音が聞こえた。はっとして目をやると、走り去る赤いスポーツカーのテールランプがみるみるうちに遠ざかっていった。それを見送りながら、見られていただろうか、という思いが膨れ上がる。

「どうしたの?」
「いえ、なんでもないです」

 状況を知らない西嶋にぎこちない笑みを見せて取り繕うと、涼子は置いておいたバッグと、地面に転がっている赤いハイヒールを拾い上げた。あらためて明美から事情を聞き直す必要がありそうだ。
 おそらくそれを把握した西嶋が、店においで、と声をかけてくれた。

 エレベーターに乗ったところで、涼子はなぜだか急に落ち着かない気分になった。すぐ右に立つ西嶋をそっと見上げる。手を伸ばせば容易に触れることのできる距離に身を置いているのだと思うと、胸の鼓動が早まる。ついさきほど抱きしめられたばかりだというのに……。
 視線に気づいた西嶋が片眉を上げ、首をかしげて見下ろしてきた。

「どうかした?」
「いえ、あの、藤堂さんとはどういう……」
「ん?」
「さっき呼び捨てにしていらっしゃいましたよね」

 ああ、と思い出したような声が返された。

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