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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

「怖かったわよね。ごめんなさい、力不足で」
「ううん……私がGPSを忘れたのがいけないんだよ。約束してたのに。涼子さんに警護してもらえることになって安心しちゃって、気を抜いてたのかも」
たしかに、明美の精神的な負担が少しでも軽減されたことは進歩といえる。それでも問題が根本的に解決したわけではない。彼女の行動は、自分から火の海に飛び込んでいくようなものだ。そして実際にそうなってしまった。
「今日はお休みよね?」
「うん。勝手に出歩いてごめんね」
「いいえ。私が明美さんのプライベートに口を出すことはできないわ。でも、私はあなたを護りたい。だから話を聞かせてほしいの」
「うん……」
それから、明美はぽつりぽつりと話し始めた。
「お店のママから連絡があって、バイトの子が夏風邪で来られなくなっちゃったから、入れないかって言われたの。ママは警護の契約の内容までは知らないし、毎日二十四時間体制で護ってもらえてると思ってたみたいで。ちゃんと説明しなかった私も悪いんだけど……。それで、急だったし、涼子さんと城戸さんに連絡しそびれちゃって、そのまま出勤しちゃった。で、お店が終わって外に出たら、あの男がいたの。怖くて怖くて……気づいたらここに来てた」
明美の視線は西嶋に向けられていた。甘い誘いを孕んでいるように見えるのは気のせいだろうか。見られている西嶋のほうは作業に集中しているのか、彼女の視線をさらりとかわしている。
「ねえ明美さん。小林が、明美さん以外に、あいつもって言ってたんだけど、誰なのか心当たりはある? 小林に恨まれるような人」
「あいつ? んー、お店の常連さんとかかなあ」
「そう。……じゃあ、明美さんの本名を知っている常連さんは、他にいる?」
「えっ」
明美の表情がこわばった。

