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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

「明美さんのことで、なにか知っていることが……?」
「いや、ただの勘さ」
「バーテンダーとしての?」
「まあね」

 西嶋は微笑む。人を見る目に長けているこの男が言うのだから、おそらくそうなのだろう。
 たしかに違和感はあった、と涼子は思う。ほかに本名を知っている常連客はいるかと尋ねたときの明美の取り乱した様子は、小林に対する恐怖よりも憎悪を感じさせたし、なにかを隠したがっているようにも見えた。小林が恨む第三者と関わりがあるのだろうか。

「私がしっかり話を聞けていれば……」

――私がもっと、強ければ……。

 その思いに胸を締めつけられ、俯く。

「涼子さん」

 西嶋が、持っていたグラスを静かに置いた。

「もっと自分を大切にしないといけないよ」

 唐突に発されたのは、まるで子供を叱り、丁寧に諭すような固い声だった。沈黙の中、ひかえめに視線をやると、そこには熱くて切ないまなざしがあった。

「どうして誰にも助けを求めようとしないんだ」
「それは、だって、私の仕事だから……」

 その視線から逃れるようにまた俯くと、ひざの上できつく握りしめている両手に骨ばった左手がそっと重ねられた。大きなぬくもりに、じわりと目頭が熱を帯びる。

「違うだろ」
「…………」
「俺には言いたくない?」

 どこまでも優しい問いかけに、涼子は首をかすかに左右に振った。小さく息を吐き、震える声を絞り出す。

「巻き込みたくないんです、もう。誰も犠牲にしたくないから……」

 いつからこんなに涙もろくなったのだろう。にじんでいく視界の中でそう思ったとき、手に乗せられていたぬくもりが離れてしまった。
 気に障る返事をしてしまったのだろうか。それとも、泣いてばかりでうんざりさせてしまったのか。悲観的な考えがよぎった直後、背中に置かれた温かい手のひらの感触に、肩がぴくりと反応した。

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