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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー

 西嶋と真正面から向き合いたくてわずかに身をよじると、その動きを“拒否”とみなしたのか、彼の手が名残惜しそうに離れた。とっさにその右手を引き戻し、両手で包む。
 西嶋の動きが止まった――。
 自らの意志で初めて触れたその手は、大きく、温かかった。皮膚に埋もれる骨、手の甲に浮き出る血管、綺麗に伸びる指の関節、その一つひとつが男を感じさせる。

 まるで時間を失ったような静寂の中で、小さく漏れる自分の呼吸の音だけがやけに響く。涼子は、目の前で無言を続ける西嶋の、戸惑いに揺れる瞳を真っ直ぐに見つめた。

「私は」
「…………」
「あの」
「……ん?」

 言葉を詰まらせれば、ようやく彼が優しい相づちで先を促してくれた。その温かい手を少しだけ強く握り、今まさに胸から溢れ出そうな想いを解放する。

「私は、あなたのことを、考えています」
「……っ」

 一瞬、西嶋の目が大きく開かれた。その綺麗な瞳はやがて妖しく色めき、本能を誘う。
 椅子に座ったまま正面から向き合えば、西嶋の広げた脚の間に自分のひざを入れる体勢になり、互いの脚がかすかに触れ合った。意味もなく照れていると、不意に腰に腕を回され、ぐいと引き寄せられた。

「あっ、待って」

 黙って動きを止めた西嶋が、熱のこもった目で見つめてくる。

「……待って」

 祈るような呟きにも、もう待てない、と言わんばかりの表情を返され、髪をすくようにして頭を撫でられる。

「あなたの……」

 その先がうまく言葉にならない。

――あなたの気持ちが知りたい。

 饒舌なのは心の声ばかりで、そんな一言を発する勇気さえない。そうして躊躇しているうちに、髪を撫でていた西嶋の右手がそのまま後頭部まで差し入れられた。

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