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琥珀色に染まるとき
第7章 慈しめば涙して
第八章 慈しめば涙して
「お待たせ。行こうか」
片づけを終わらせ、声をかけると、小さく返事をした涼子が席を立った。
扉を押そうとする彼女の腕を掴んで振り向かせる。そのまま扉に身体を押しつけ、唇を奪った。角度を変えて何度も口づけを繰り返す。
「んっ、んぅ……」
涼子は、すぐに甘えた声を漏らし始めた。その反応に煽られてつい先に進みたくなるが、理性を呼び起こし自制する。
「忘れてるよ」
開いたシャツからかすかに見えている、黒いレースと胸の谷間が隠れるように第二ボタンまで閉じてやる。開けたのは俺か、と心の中で苦笑しながら。
「あっ、すみません」
焦って胸元を押さえる姿を目の当たりにすると、腹の底に熱いものがこみ上げた。
長い間、性行為に積極的な女ばかりを相手にしてきたせいなのか、純粋に恥じらう姿がやけに新鮮に思える。こういうとき、恥ずかしそうなそぶりを見せる女は何人も見てきたが、そのほとんどが演技じみていて興ざめさせられたものだ。
そのただならぬ色気と、それをひけらかさない淑やかさを兼ね備えた涼子を見ていると、女とは本来こういうものだったかと感心するとともに、少なからず戸惑いを覚える。まるで女を知ったばかりのガキだ。
そうやって自らを嘲笑い、必死に理性を保っているとも知らずに、涼子は赤く濡れた唇を震わせて、潤んだ瞳ですがるように見つめてくる。容赦なく。無意識にもほどがある。
「そんな目で見られたら、もっとしたくなる」
口角を上げて意地悪を言えば、一瞬目を見開いた涼子は黙りこんで俯き、胸に顔をうずめてきた。クールな彼女はもうどこにもいない。
ああ、と喉から無意識にこぼれる息は、もはや自分のものとは思えないほど切なく、甘ったるい。景仁は、思いのままに涼子の細い身体を抱きしめた。