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琥珀色に染まるとき
第7章 慈しめば涙して

 こんなミスを犯すのは初めて――そんなふうに、自分の失態を心底軽蔑するような表情で涼子は立ちつくしている。

「明美さんが無事だったのは、涼子さんがいたからだよ。そうだろ?」
「……西嶋さん」

 涼子は今にも泣きそうな顔を左右に振り、携帯を上着のポケットに戻しながら口元を歪めた。

「この間のことも。気が動転して……すみませんでした」
「そんなことはもう気にしなくていい」

 その小さい頭を優しく撫でてやると、彼女は腹の前できつく手を組み、俯いた。

「でも、またご迷惑をおかけしてしまって、本当にごめんなさい」
「どうして謝るの。涼子さんは悪くないのに」

 その白く小さな握りこぶしに自分の手を重ね、諭す。我ながら陳腐ななぐさめ方だと思った。

「貸していただいたタオルも……」
「ああ、気にしないで。あげるよ」

 答えながら、あの雨の日、彼女の肩に白いタオルを掛けてやったことを思い出す。
 あの日の涙のことはずっと気がかりだった。なにか悪い出来事があったことは間違いない。そのなにかが起こったのは、あの日なのか、もっと前なのか……。
 今夜の様子となんらかの関係がありそうだが、本人が話したくなるのを待ったほうがいいと感じる。無理に聞き出してつらいことを思い出させるくらいなら、触れずにいてやりたい。他人に明かしたくない秘密など誰にでもある。今だ、と涼子が感じたときに言ってくれたらそれでいい。

 黙りこんでしまった涼子を見下ろしながら、やはり今夜はおとなしく帰るか、と考えていたそのときだった。

「……違う」

 ふと耳に入ってきた声は、とても小さかった。

「ん?」

 聞き返すと、一瞬だけこちらを見た涼子は再び俯き、胸によろよろと顔をうずめてくる。

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