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琥珀色に染まるとき
第7章 慈しめば涙して

「私が悪いんです。状況も立場もわきまえずに、自分の気持ちを優先したから……」
恥じらいを帯びた女の声が胸に直接響く。頭に残っている限りの理性をかき集め、黙って言葉の続きを待った。
「どうしても、西嶋さんのことばかり……今の私には、それ以外のことを考える余裕がないんです。……本当に、最低ですね」
自責思考な彼女は、おそらく自身を咎めるためにそう言ったに過ぎない。しかし、心の奥まで浸透するような正直なその言葉は、もはや愛の告白以外のなにものでもなかった。
「私はきっと、あなたを……」
最後には消え入りそうな声をどうにか絞り出すと、涼子はそのまま黙りこんだ。
景仁は、熱いため息を吐き出した。
無言で俯く彼女の背中に両腕を回し、右手で頭を抱えこむようにして大事に抱きしめる。首を倒して暗髪に鼻をうずめると、かすかな香りに包まれた。
「それなら、俺だって同じさ……」
そう囁いたときには、理性など崩壊していた。
***
薄暗い部屋に入るなり、景仁は涼子を抱き寄せ、胸の中に閉じこめた。
今さらと思いながらも、本当にこんな場所でいいのかと尋ねると、腕の中で静かに頷く小さな頭。
「西嶋さんとなら、どこでも構いません」
信じられないくらい健気なその言葉に軽くめまいを覚え、さらにきつく抱きすくめた。
本来なら自宅に連れ帰るべきだった。しかし、互いから醸し出される艶めいた空気がタクシーに乗る時間さえもどかしく感じさせ、たどりついたのは、店から歩いていける距離にあるなんの変哲もないラブホテルだった。
まったく理性もくそもない。これでは今まで戯れてきた女たちと変わらないではないか。そう自分自身をなじりたくなる。静かに苦笑していると、腕の中にいる涼子が身をよじって身体を離そうとした。

